憂いの天使
2 動と静(裏と表)


パラメキア帝国は砂漠に覆われた場所にあり不気味な城とも呼ばれていた。
城内は暗くとても人間が住めるようなところではない。
そんな場所にも普通に見える兵士がいた。
最上階でダークナイトと言う真っ黒な鎧の騎士が俯くように座ると静かだった
皇帝の顔が険しくなったのだ。

「愚か者め。あれほど注意をしろと言ったではないか!顔や肢体には傷つけるなと・・・」
「申し訳ありません。まさか反乱軍の宮廷魔導師に邪魔されまして・・・」
「言い訳はいい・・・・次こそ取り返せ。失敗は無いぞ・・」
「はっ・・・」

それだけを言うと皇帝は姿を消した。

消えた主の席を見つめてダークナイトが顔を歪めて呟く。

(フン、次がないだと?笑わせるな・・・・・次がないのは貴様のほうだ。マティウス・・)

ダークナイトに野心があった。
いずれは自分が取って代わり皇帝の座を狙っているのだ。
そんな野望が達成する日を夢見ていた。




マティウスは奥深い洞窟のようなところにいて何かを魔方陣の中に閉じ込めている。
閉じ込められている黒い物体は人の形をした魔物。

「ぐあああああぁぁ!!こんな事をして許されると思うなよ・・・・マティ・・ウス・・・・」
「フン、そのセリフは聞き飽きたわ。ガーランド・・・いや、カオスと言うべきか?」
「わしを封印することは・・・世界を歪ますぞ。それでも良いのか?」
「ジェイドの封印を解くには貴様ごとを封じるしかないのだ。まあ、消えてもらっても
構わんが・・・」
「馬鹿な!」
「クククク・・・笑止、貴様には分かるまい・・消える前に貴殿に伝えておく。貴殿が
待っている者は私の手の内にあることを忘れるな・・・・・」
「たわけが!あの者まで手に入れたら世界が崩壊する・・・いずれは貴様も
後悔するぞ・・それを思い知れ・・・・」





アルテアにある反乱軍の本拠地。
その奥にある部屋には魔方陣がある。
それはミンウたちが使う白魔法の魔方陣で皇帝が使う黒魔法とは対照的なもの。
黒魔法を悪用する皇帝とは違いミンウが求めている癒しや回復させるものだ。
ミシディアから学んだミンウは偉大なる白魔導師になりそしてフィン国の
宮廷魔導師と呼ばれるようになったのだ。

「ミンウ・・・・・・」
「・・・ヒルダ様、大丈夫です。この方は・・・これほどまでに強い力を秘めているとは・・・」

魔方陣の中で眠っている戦士を見つめるミンウは驚いていた。
ミンウのそばにいるのはヒルダと呼ばれたフィン国の王女である。

「それならばいいのです。この方はフリオニールの大事な客人なのですから・・・・
完治してもらわないと私にも責任があります」
「王女は気に病むことはありません。傷も残っていません・・・・・流石は神の
選ばれしき者」
「ええ、そうですね・・・」







ここが広間の奥とは知らなかった。
私は遠くで彼らの声を聞いていた。
一人は・・・・ミンウと言う壮大な力の持ち主、白魔法を使う魔導師。
もう一人はヒルダと呼ばれた王女。
何故か癒されている感じがする・・・・・
まるで懐かしい感じだ。






「ミンウ。ウォル・・・ウォーリアは大丈夫なのか?」

祈りを終えたミンウに声をかけてきたのはフリオニール

「ええ、大丈夫ですよ。あなたは行ってあげてください」
「有難う・・・ミンウ」
「どういたしまして・・」
「私は遠慮するわ。フリオニール・・・」
「え?どうしてなんだ・・・・」
「もう、フリオニールって最低!!」
「何でなんだ?」

「私も退散するとしましょう。そうですねマリア・・・・」

三人が立ち去った。






誰もいなくなった後、フリオニールは眠っているウォーリア・オブ・ライトを見つめる。
まだ目覚める様子がない。

「ウォル・・、逢いたかったよ」

俺はどれだけこの手に抱きたかったか、あなたは知らないだろうが・・・・・
あの世界から去る時は離したくなかった。
これが俺の本音だ。
だけど・・・・・それをしてはいけないと心が止めた。
今の俺はサドフリやアナフリの時よりも心を開いている。
秘めた想いはあなたへの愛だ・・・・。

「・・・・・・愛している・・・・・」
「・・・・・・私も・・・・・だ・・・・・・」

「え・・・・?」

その声にフリオニールは現実に戻る。
目の前の眠っていたはずの戦士はすでに意識を戻していた。

「私も君を愛している・・・・・どれだけ心を隠してきたのか・・・いや、後ろ髪を引かれる
想いに・・・・・私は逃げたのだろうな・・・・・」
「逃げたなんて・・・そんな!」
「すまない・・・・すぐには答えられなかったのは逃げたのと一緒だ」
「でも・・・・結婚したいと言った時は・・・・・」
「少しだけ・・・・考える時間が欲しかった。だが・・答えが見つからなかったのは本当だ」
「だから・・・・あなたは微笑んだだけなのか・・・」
「しかし・・・・・あの戦いの最中に約束をしただろう?」

そうだった。
俺たちはカオス軍との最終決戦前に契りを交し合った。
あなたを抱いたのはその時だけ・・・・・・・・
それが初めての性行為。

「それでも・・君は私を労わってくれた・・・・・この体が女性となることにも・・・・・・」
「あなたはあなただ。女でも男でも俺には関係ない!男だとしても俺は・・・
あなたを抱くつもりだったが・・・・・・」

「・・・・・有難う。フリオニール・・・・・私はそれだけでも良かったと思う。だから・・・」
「いいんだ・・・もう一度あなたと出会うことも出来たのだから・・・・・」

俺は改めてウォーリア・オブ・ライトを抱きしめた。
「何度でも誓う。あなたと結婚したい・・・・」
「・・・・・私も誓おう、君と結婚したい・・・」

俺は嬉しかった。
あの時とは違ってウォーリアの思いが俺にも分かったからだ。

「君の世界にも悪しき者が蔓延っているのだな」
「皇帝の力を感じた・・・・・だけど逃げられたみたいだ」

光の戦士から思わぬことが解った。

「・・・・・・・あれが・・・・・皇帝・・・・」
「会ったのか?奴と・・・・・」
「会ったと言うべきか・・・・・」
「ウォル・・・・・・」
「・・・・・・・私に『嫁になれ』と迫ったのだ」
「なんだって!!」
「勿論、君以外には結婚する気にもなれぬし・・・・第一、私を知っている素振りだったが・・・・」
「・・・・・・・」


俺はこれ以上、何も言えなかった。
ウォーリアから記憶が消えていたことを知ったからだ。
だから・・・・約束したはずの話もおかしいと思っていた。
あの時はきちっと「結婚したい」とまで言ったはずなのに・・・・・

すべては皇帝の仕業になるのだろうか。


(ウォルの記憶が・・・消される前に何としても・・・・・)


俺の心の中に不安が過ぎる




続く〜




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2012/02/09UP


この世界ではフリオニールはアナフリの容姿で
性格は統一されてますが普段ノマフリな状態。
しかし・・・・皇帝も色々としてくるので厄介です。
それもガーランドまでが・・・・・・

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