主従 1「白き狼王」




銀色のような狼・・・・・
それは白に近い色をした狼だった。
まだ私が幼い頃に出会った。


此処はその昔、神の国と言われた今や忘れられた国。
名は・・・大和国
その国には最後の皇族がいる。
そんな中で生まれたのがウォーリアなのだ。
ウォーリアは女なのだが皇子として育てられ
そのウォーリアが七歳の頃、何者かに浚われた。


気がつくと知らない内に私は人攫いに誘拐されていた。
目覚めた私の周りには狼の群れがいたのだ。

「ガルルルル・・・・・・」

白いような銀色の狼が人攫いの者に対して牙をむく。

「このヤロウ!狼のくせして俺たちを舐めるんかーー!!」

悪党のリーダーが狼にナイフで切りかかる。












そうして皇子は無事に戻ってきた。
狼の群れと一緒に・・・・・・

「皇子・・・・俺がいながらなんと言うことに・・・」
守役である竜騎士の息子カインがウォーリアを心配していたのだ。

「俺がいなければ危ない所だった・・・」
「また、お前か・・・・・抜け駆けは許さんぞ。フリオニール・・・」
「フン、それはこっちのセリフだ」

(また・・・・ですか、この二人はどうしてかこうなんでしょうか・・・)

二人の間に入った白魔導師ミンウ。
先代の王の頃からフリオニールを知っていたミンウはため息をつく。
狼と竜は仲が良いはずであるのだが・・・
そんな二人を制したのは皇子であった。
ミンウは少しほっとした。



この国では隣国ディストの竜が守り神となっていて常に戦いに借り出されていた。
フィリップが引退をしたため、現在はリチャード・ハイウィンドが
竜の王を勤めている。
そんな竜騎士の一族は竜の姿でいることが多い。
日夜、人の姿のままでいられる者は王家のみである
カインは皇子の守役ではあるが父リチャードと
瓜二つの顔を持つ為に間違われるのだ
竜族の成長は一年と早い。
その為か、大人と思われるのは当然だった。

狼族もまた、この国には無くてはならない戦力だった。
大和国の隣の国には獣の王がいた。
普段は人の姿をしているが夜になると姿を戻す。

大和国の周りを囲むように竜と狼と魔法の国で守られている。
以前より何かがあると感じた大和国の女王ヒミコは
魔導師の国ミシディアから白魔導師ミンウと相談をしていた。













女王ヒミコの予感は当たる。
それは十五年後の春を迎えた頃、謎の敵が襲ってきた。
最強と言われた竜の国が陥落してしまう。
その竜王であるリチャードの消息も掴めないままだ。

「貴方の父である竜王の消息が解らないのです」
「そんな・・・・・」

カインは竜の国を心配するのだがどうすることが出来なかった。


大和国にも得体の知れない妖魔に襲われる。
急な出来事ではあった。
まさか敵はこの国に妖魔を送り込んでくるなど予想もしなかったのだ。
逃げ惑う国民たち・・・・・
城の側まで火の気が迫る。

ヒミコは自分にも予測をしていてもしもの場合、カインに皇子を連れ出して
狼の国へ向かうようにした。
しかしそんな戦火の中でカインは待機していたミンウに託して皇子だけを逃がす。

「ミンウ殿、皇子を頼む・・・」
「解った・・・君も命を無駄にしないでくれ。カイン・・」
「俺は何とか敵の軍を抑えておく。行け!!」
「カイン!」

「行きましょう。此処は危険です皇子・・・」

馬を待たせていたミンウは皇子を乗せると颯爽と走り出す。
街々が焼かれていく中でその戦火から遠ざかる。


皇子・・・いえ、皇女様・・・・俺を許してください。あなたの母上が
魔物になってしまった事は言えなかった・・・・・・

カインはこの国の女王ヒミコが魔物により洗脳されていくのを
影で見てしまう。
決してウォーリアには見せてもいけない。
何としても皇女には逃げ延びてもらいたい。
俺はそう思った。
だからミンウに皇女を託したのだ。


ミンウは皇子を連れてラクダを走らせているのだが
そんな彼らに魔物の追っ手が迫る。

(何としても・・・・皇子を・・・)

何度も魔法で防戦して逃げ切った。











狼王のいるグランティス国。
狼王フリオニールは事前に察知していてディストにも使いを出した。
だが、時すでに遅しディストが没落していた。
何としても大和国は守らねばいけないと思っていたのだ。
そのためにもミンウとも打ち合わせをした。

そしてフリオニールの予感は当たった。
崖の上で見た空の様子が変わっていくのを知る。

「ウォル・・・どうか無事でいてくれ」

ミンウに託した思い。
親友のカインにもそれを願っていた。



やっとラクダを確認するとフリオニールは数人兵士を連れて走り出す。

そんな彼らの前に突然、何者かが姿を現した。
ミンウを攻撃しようとしていた。
恐らく魔導師ミンウを狙っていたのだろう。
それはウォーリアが盾となり失敗に終わるが驚いたのは
その魔物のほうだ。

「おのれ〜!!折角の人質が・・・」
「何だと・・・!」

倒れていく皇子を庇いながらフリオニールが魔法を使う。
周りにはすでに数名の兵士に囲まれていく魔物。

「お前は何者だ!」
「貴様には名乗るつもりは毛頭ない!この者は諦めるが・・いずれは私の物だ!
覚えておくがいい・・・・・狼の王よ・・・・」

すうっと消えて行く魔物。
フリオニールとミンウは相手が普通の魔物では無い事に気づいた。

「・・・・あなたも気づいたようですね。フリオニール…」
「あぁ、奴は・・・ただの魔物ではないようだ」
「ですが・・・この方を早く治療しなくては・・・」
「あぁ、ミンウ・・・・頼む」

フリオニールは倒れてしまったウォーリアを抱えて城へ戻る。



フリオニールとミンウはまだ相手の正体を知らない。
それがパラメキア帝国の皇帝であることを・・・
大和国を狙ったのはパラメキア帝国。
妖魔の帝となったマティウス本人なのだ。

昔より神の子である大和国の皇族が世界を守っていたのは事実。
パラメキア帝国がそれすらも支配しようと目論んでいた。
これから忍び寄る悪意










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2012/04/30UP


久々のお話はバラレルです。
大和国のヒミコって邪馬台国の卑弥呼ですよ
ここでも皇帝マティウスが邪魔をします
狼と言っても人の姿で普通に通してますが
国に戻れば狼でいるフリオニール。

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